ひつじの説明書。

ーヘルス・本・イギリスのいろいろを発信ー

肌をなでれば、脳がよろこぶ


クリニックに勤めていたとき、自閉症の子たちの治療に関わっていたことがあります。そこでは自閉症だけでなく、人として大切なTipsをたくさん教えてもらいました。

そのなかでもとくになるほどと思ったのは、過敏な子に対するTips。

最近は「触れられるだけでも嫌!」という子は多く、人と接するのが苦手という子は触覚過敏のことが多いようです。

そういう子は、椅子の感触でくねくねしてしまったり、ベッドのシーツの感触が苦手でよく眠れなかったりすることもあるようです。

これは大人も同じで、人に触られるのが苦手な方は、無意識に人との交流を避けていることも多いみたいです。

 

それで、クリニックでやっていたのが、肌にあえて刺激を与えること。

感覚ブラシで末端から中心に向かって何度もこすってあげるだけ。

それだけで過敏さがとれるという治療です。

実際過敏が安らいで人間関係がよくなったという方はたくさんいました。

 

そのときから、肌の感覚について意識するようになりました。

山口創さんの皮膚は心を持っていたという本では、脳と皮膚は同じ外胚葉から分かれており、脳のような情報処理能力を持っていると書かれていました。

皮膚からの刺激が、脳に直接影響するのだそう。

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その本を見て思ったのは、イギリスに来てから他人とのスキンシップが増えたこと。日本では夫、または患者さん以外で身体をさわることはほとんどなかったけれど、イギリスでは頻繁にその機会がある。

お義母さんは会ったらほっぺにキス、お義父さんや友人は別れ際にハグ、スキンシップが多い人は話している最中にハグやキス、手を握られたりなどが日常にある。

でも、やられて悪い気は全然しませんでした。

会って数回なのに、もうその人に親近感がわいてしまっていました。

だからイギリスでの印象は、とにかく人が温かいと感じています。

 

本を読んでから、わたしはできるだけ家族にはよく触るようにしています。

さすったり、ハグしたりするだけで、愛情が伝わる気がするからです。

誰かが悩んでいたり、具合が悪かったりすると、背中をさすったりしますよね。

あれだけでもストレスや痛みが和らぐので、なにか気の利いた言葉をかけるよりも断然効果があるとおもっています。

 

そういえば、母が亡くなったときに一番後悔したことは、母を触ってあげていなかったことでした。

介護している際に、足のマッサージや手を握ってあげていましたが、なんでいままで触ってあげなかったんだろう、ハグしてあげたらもっと安心できただろうなとか思ってしまいました。

いなくなってから、その人の体温が恋しくなるもの。

「人肌恋しい」なんて言葉がありますが、やはりどこか人間は人の体温を求めている部分があるのかもしれません。

 

日本は文化的に、あまり人の肌に触れることが良しとされない文化。

抵抗がある方も多いでしょう。

でも小さいときから、肌をなでたり、さすったりして刺激を与えておくと、親の愛情が伝わり、やさしく穏やかで、人当たりの良い子に育つようです。

大人も肌をさすったり、誰かと肌を触れ合わせたりすることで、ストレスが軽減されます。逆に、肌に炎症が起きていたり、乾燥していたりすると、イライラしがち。

 

皮膚と脳のつながりを意識してみるだけでも、少し安心感が増したり、イライラが軽減されたりするかもしれません。